セミナーレポート『外国人材活躍の為の問題解決マネジメント』


2021年5月28日金曜日、一般社団法人 外国人雇用協議会とリフト株式会社との共催で「外国人材活躍の為の問題解決マネジメント」をテーマにしたオンラインセミナーを開催致しました。


株式会社オリジネーター取締役専務執行役員の工藤 尚美氏(外国人雇用協議会理事)、株式会社One Terrace取締役の阿久津 大輔氏、リフト株式会社代表取締役の杉村 哲人氏が登壇し、外国人材採用後に起きやすい「あるある問題」について、その解決方法を成功事例や経験をお話しさせて頂きました。

ご参加頂いた方の満足も高いセミナーとなりましたが、その概略についてレポート致します。


①外国人材活躍の為の「あるある課題」


杉村氏 :今日のテーマでもある外国人材活躍の為のあるある課題ですが、勿論外国人材も一人一人違うのですが、その中でも類型化された課題について、お二人にお話しを頂いて参ります。まずは、阿久津様宜しくお願い致します。

阿久津氏 :では、あるある課題とはなんぞやと言うところと、今日は日本語教育関係者の方も多く参加されておられますので、仕事で使う日本語の課題と言うところまでお話をさせて頂ければと思います。

まず、外国籍社員を採用している企業の方からよく聞く課題としては、「日本語力の課題」が必ずと言っていいほど出てきます。

阿久津氏 :実際に、統計的なを見てみても、日本語能力の問題や、日本人とのコミュニケーションへの不安ということを企業側が懸念していることが分かります。

阿久津氏 :これを、外国人の活躍を考えて行く際に「日本語が出来ないから問題」と私は言っています。どういうことかというと、外国人の方が企業に入った後の評価やコメントをする際に「結局、彼(彼女)は、日本語が出来ないんだよね」ということが一番上に来てしまうんですが、「それは本当に日本語能力が問題なんですか?」ということになります。そこで、今日ご登壇されているオリジネーターの工藤様と私とで、本当は、どんな課題なのかということを分析させて頂きました。

まずは、働いている外国籍社員の方にも課題ですが、1つ目は、勿論、職場で使う日本の課題は必ず付きまとってきます。ですが、「日本語が出来ない」という課題には、実際には、他にもたくさんの背景や観点があるかなと考えています。

2つ目が、文化・生活習慣の違いによる課題、3つ目がビジネス習慣・社会人1年目の課題というものですね。この辺りは、外国籍社員の方を採用されている企業様では納得感があるところかなと思いますが、これが全て「日本語の課題」というところで出てきてしまうという部分を後で深めて行きたいと思います。

阿久津氏 :また、右側で書いていますが、採用する企業様の方にも課題があります。上司や、同僚が日本人と同じように接した際になかなかうまくコミュニケーションが取れないとか、評価や考課についてのフィードバックをした際に、思っていたよりも反論されてしまうなんて言うことが課題で上がってきます。

また、配置、育成、評価、報酬といった人事の課題も結構多くなってきています。

最近ですと、ジョブ型とメンバーシップ型といった言葉も良く聞かれますが、ここに大きく関わってくる部分になります。

最後に、福利厚生などの課題も出てきます。なかなか、外国籍社員の方に説明しづらい制度等もあるので、そういった制度を改善する企業様も出てきています。

工藤氏 :入社後に起こる問題では、どうしても外国籍社員の課題ということもそうなんですが、振り返って考えてみると、企業側の体制がどうなっているのかというのも同じ位重要だと考えて頂くといいのかなと思いますね。

阿久津氏 :ここは、結構奥深い問題でして、ここでは課題の概要だけをお伝えしていますが、1つ1つが根深い問題になっているケースがあります。今日全部を網羅的に話すのは難しいので、抜粋をしながらお話を深めて行きたいと思います。

大切なことは、あるある課題である「日本語が出来ないから問題」は、外国籍社員の日本語力の問題だけでは無くて、外国籍社員と雇用する企業のどちらも抱える問題なんだということをお互いが認識する必要があると思います。これは、企業と人材だけではなく、それを支援する企業の側も認識するといいのかなと思っています。

また、この課題は、就職した後の定着に密接に関わってくる問題になります。

工藤氏 :弊社では、リュウカツという留学生の為の就職情報サイトを運営していますが、毎年、理系留学生の会社選びとキャリアプランというアンケートを行っておりまして、その結果の中から「離職について」という項目でお話したいと思うのですが、今後のキャリアプランについて聞くと、一番上に来たのが、「一つの企業でできるだけ長く勤めたい」という回答でした。

これ嘘のような回答なんですけど、実は毎年これが一番上に来ます。

このアンケートは、留学生の回答なので就職活動中のアンケートですが、うちのアンケート以外にも公的な機関が同じような質問をしているんですが、出来るだけ長く勤めたいという結果が出ています。

次は、学校を卒業していて就職している方に取ったアンケートですが、結局、この方々も出来るだけ長く働きたいという回答が一番多く出ています。

工藤氏 :これが非常に大きなポイントだと思っているんですが、就職する前であれ、就職した後であれ、出来るだけ長くその会社で働きたい、日本で働きたいと留学生の方は思っています。

ただ、結果的に離職してしまうのはどうしてだろうということが今回の大きなテーマなのかなと思います。

そこで、既に社会に出ている外国籍社員の方達にアンケートを行ったもので、日本で実際に働いてみて不満に思ったことのアンケートを見てみると、一番上は、給与水準が高くないということですが、次が、日本語ネイティブではないことへの配慮が不足ということになっていて、早口だったり、難しい言葉を使われるというところが上位に来ています。

工藤氏 :これは、日本語の問題もそうですし、文化的な背景もそうなんですが、バックグラウンドが違う人を迎え入れる際に、企業側がどの程度、その人たちのことを理解しているのかなということが表れているのかなと思います。

企業さんにとっては、日本の企業なんだから、日本の社会を知ってもらって、日本のスタイルに合わせて欲しいということも、もっともなんですが、一方で、そもそも企業さん側が、外国籍社員がとても苦痛に感じたり、彼らにとってはとても失礼なことだったりと言うことを無意識にやってしまっているということなのかなとも思います。

阿久津氏 :離職ということでデータを見てみると、日本人の離職率と、外国人留学生の新入社員の方の離職率を、違う調査ではありますけども比較してみると、日本人の方も外国人の方もほとんど変わらないという結果になっています。

阿久津氏 :皆さん、何か、外国人というとすぐ辞めてしまうんではないかと思われている方もいると思うんですが、データによればほとんど日本人と変わらないということで、そこまで離職を恐れる必要はないんじゃないかと思います。

更に、離職の中身を考えて行きたいと思います。

私達も結構色々なお客様に入り込んで定着のお手伝いをしていて、国内の留学生を採用する場合や、海外の学生を採用する場合もありますが、入社年次によって辞めた際の離職理由が変わっていくのではないかと思います。

どのタイミングの離職でも、企業様に原因をヒアリングすると、日本語が出来ないことが理由ということになりがちなんですが、実は深堀りすると違っているというのがこれからお話したいところです。

時間軸を、1年目、3年目、5年目において考えてみます。

まず、1年目ですが、直ぐに辞めてしまうというのは、そもそも採用のミスと言うのもあります。1ヵ月とか3か月とかで辞めてしまう方というのは、なかなか入社後の施策では防ぎようがなくて、採用のミスマッチというが大きいと思います。

それ以外では、会社に合わなかったという方が多くなってきます。これは、外国籍社員の方が仕事や会社に適応できていないということになります。

頑張ろうとしているんだけど、なかなか適応できないということでの離職ということです。

じゃあ、そこをクリアした方が次に当たるのが、育成の課題と言うことがあります。

これは、ある程度職場に適応した外国籍社員が、なかなか会社に1人前として認められないということが問題になります。本来であれば責任を持って仕事を回していくという段階なんですが、特に配属先の上長や同僚等の支援が得られない、上手くコミュニケート出来ていない場合に起こりやすくなります。これを育成の失敗離職と言っています。

多くの企業様が採用段階からこの3年を目安にされていたりするんですが、毎年毎年、継続して外国籍社員を雇用しているような大きな会社様だと、次の5年目問題が出てきています。

そういう企業様では、人材が企業になじんで、3年目の育成というところまで上手く行くんですけど、実は、5年目というのは評価の差が出てくる時期に当たります。

この評価の差と言うのは何かと言うと、簡単に言えば、昇進の部分で、昇進が出来るかどうかとか、同期入社の日本人との給料の差が出て来たり、日本人の方が評価が高そうと思ってしまう外国籍人材は、この時点で、ある程度の経験を積んで他社に転職という形になります。

会社から見ると、折角育成が上手く行って、これから仕事を任せて活躍して欲しいという段階に入るんですが、ある日突然いなくなってしまうということで、ある程度計画的に外国籍社員の採用を進めてきた企業様で課題になって行く内容です。

阿久津氏 :じゃあ、人材と企業、どちらに課題が多いのかということなんですが、入社当初は、採用のミスマッチ以外は、外国籍社員の方がいかにその会社に適応して行くか、一人前になっていくかという課題が多い領域で、日本の商習慣や社会人としてのキャリアをどういう風に考えて行くかに関わってきます。単純に職場の時間を使っているだけではなかなか難しくて、それ以外の時間を使って人材側が努力をしているかということが大きいのですが、入社してからの時間が長くなればなるほど、企業体制の問題が大きくなって行きます。

この問題は大きく分けて2つあって、1つは企業のマネジメントに関わる問題で、上司の方や同じ部署の方とのコミュニケーションや進め方が合わないというようなこと、もう1つが人事のことで、同じ仕事を同じ時間やるのであれば他の会社ならもっと稼げるという状況だったり、評価制度等の制度面などに不満がある等の会社側の問題となって行きます。

その中で、最初の3年というところをどう乗り切って行くのかということが皆さん重視されますので、3年目までの外国籍社員の適応について考えてみます。

下記は良く見るモデルで、留学生が在籍する学校関係者様は考えられていたりすると思いますがU字型の曲線モデルです。

阿久津氏 :最初は、とてもモチベーションが高いハネムーン期から始まって、ある時期から様々な原因でモチベーションが下がるショック期を迎えて少し停滞する感じで、その後、自分なりにどうして行かなければならないかということに気づいて段々回復して行って、その後で適応するという形になります。

これを採用、定着で当てはめてどのように考えるかと言うと、まず採用に関しての部分で、いかにこのショックを浅く出来るかということになるんですが、今日のトピックスだと外れてしまうので割愛して、その後の定着を上手くさせて行く為にどのような設計をするのかなということを考えて行きます。

このモデルに、接触→衝突→適応というプロセスを当てはめています。これは、外国籍社員だけではなく、日本人の新入社員でもそうですし、皆さんも新しいコミュニティに入る際にはこの段階を踏むと言われています。

ここを、いかに本人達だけに任せるのではなく、会社側が関わっていけるのかが大事になってきます。

阿久津氏 :日々のコミュニケーションが一番大切なんですが、この辺りは後程の日本語のところでお話させて頂く内容になってきます。

また、もう1つのモデルを考えてみると、ベリーの2次元モデルという考え方があります。

今までの環境や文化、習慣を縦において、新しい環境、文化、習慣を横において、マトリクスにしたモデルですが、日本の企業様では右下の「同化」を求められているのが良く見受けられます。

同化というのは簡単に言えば、「日本の会社に入ったんだから、日本のやり方でやらないとダメだよ」という話です。すると、自国の文化は捨てなさいよと言っているのと同じなんですね。

これは3年くらいまではそういったマネジメントでもある程度問題無いんですが、それ以上になると問題が起きやすくなります。

また、上手く適応しているように見える外国人の方でも、左上の「分離」に分類されている方が多くいらっしゃいます。この方々は、日本の文化や習慣は何となく分かっているので、振る舞いは出来るんですが、長くその会社で働くという考えを持たずに、上手く対応しているというケースで、この方々も3年程度は何とか続くんですが、本来であれば、右上の「統合」と言う部分を目指していくことが、お互いの為になりますし、多様性というような概念は、ここに持っていくことだと思います。

ここを乗り越えられる企業が、外国籍社員がしっかりと定着して行って活躍出来る会社と言うことになると思います。

ここまで、あるある課題として、「日本語の問題」と一口に言っても、裏には深い問題があるんですよということをご理解頂ければと思うんですが、とは言え、仕事での日本語はやはり難しく、学校で習うことと違ってきますので、採用段階では本当に日本語が上手くて優秀な学生が、入社後に当たってくる日本語の課題についても、良く起こる課題ということでトップ3をお話させて頂こうと思います。


②職場の日本語「あるある問題」TOP3


阿久津氏 :まず第3位は敬語問題です。具体的なところで行くと、表現は知っているんだけども、相手を間違えてしまう。日本語はお上手で、表現も知っているんだけど、相手を見誤ってしまうので、使い方を間違ってしまうんですよね。

工藤氏 :そもそも、敬語ってよく課題になるんですけども、実は、初級のテキストの最後で出てくるんですよね。

日本語能力試験のN4修了者でも、敬語は知っていますと。ただ、それを使いこなせるレベルと言うとなかなか難しいんですよね。

そもそも、日本語の敬語は相対敬語なので、良く中国とか韓国の方が、「うちの社長がいらっしゃいました」と言ってしまうのは、この相手を見誤るという問題ですね。

また、丁寧に話そうとし過ぎて、逆に意味が分からなくなるというケースもあります。

阿久津氏 :電話対応とかで良く起こる問題ですね。

杉村氏 :この辺りは日本人の方でも良く起こる間違いですね。

工藤氏 :私達は理系の留学生が多いので、あまり敬語の問題は起こりにくいんですが、サービス業等に就職する方だったり、社内とのやり取りが必要な方は、敬語が求められることがあって、過剰な使い方で逆に分かり難くなることがあるので、私達がそういった留学生に言っているのが、まず、丁寧に「です」「ます」を忘れないことを重視して、敬語を使いすぎることに逆に気を付けて行くように伝えています。

阿久津氏 :次の第2位ですが、「こそあど」問題となります。

日本人の方ですと、当たり前に使っている これ、あれ、それ、どれという距離感が外国人の方に理解出来ないケースが多くあって、この問題によって、現場の日本人の方とのコミュニケーションが上手く行かず、外国籍社員は、全然仕事をしてくれないという評価に繋がるケースもありますね。

また、これは、外国人の問題もありますが、話す日本人の側の問題も大きいのかなと思います。

工藤氏 :まず、この「こそあど」問題を、日本語教育的に言うと、現場指示と、非現場指示というように分けるんですが「この本、あの本」というように物がある場合と、会話の中で、「その映画」というように、物がない場合があるんですが、どちらかと言うと、日本人側がやたらとこの「こそあど」を会話の中で使っていて、例えば「あれ終わった?」という質問をした際に、受け手の外国人が「あれ」がどのことを言っているのか分からないし、混乱して間違ったり、混乱してしまうということが多くありますね。

阿久津氏 :弊社だと、海外からN3とかN4位のレベル感の学生を国内企業にご紹介するケースが多いんですが、そこではこの「こそあど」問題がかなり深い問題でして、特に技術系の現場の日本人の方の指示の中に出てくる「こそあど」は、非常に分かりにくくて、現場の方に私からご説明させて頂くんですが、日本人側の理解が進まないとなかなか解決が難しい問題だと感じています。

特に技術的に高い人材を活かしきれていない企業なんかは、この「こそあど」問題なんかが原因になっているケースが多いんじゃないかと思います。

工藤氏 :「俺の背中を見て育て」という感覚の仕事は、よりこういう問題が起こりやすくなっていますね。

杉村氏 :こういった問題が起こった際に、お話をお聞きすると日本人側の改善が重要だと思うんのですが、日本人の方々にどのようなアドバイスをされるケースが多いでしょうか?

工藤氏 :こういう指示語もそうですし、主語もそうなんですが、言いたいことを具体的に明示するということをアドバイスしていますね。

これは、めんどくさいと思われるかもしれないんですが、実は日本人の若い社員とのコミュニケーションでも、分かりにくいと思われるケースが増えていて、何をして欲しいのかということを具体的に言語化して伝えるようにして下さいということをお願いしています。

阿久津氏 :日本語が持つ、固有の美しさとかリズム感みたいなところは尊重したいところなんですが、仕事は別だよということを伝えるようにしています。

成果を上げることを目指す際に、曖昧な指示になってしまうとやはり伝わらないということになってしまうかなと思いますね。

工藤さんが日本人の若者のことを仰っていましたが、これだけ情報が多くなってスピードが増していく世の中になっていますので、逆に伝えたいことを明確に伝えないと伝わらないということを前提にしないと行けないのかなと思います。

それが特に現れやすいのが外国人との関係性というところなんですが、日本の社会を考えて行く上でもこの辺りを見て行くといいのかなと思いますね。

杉村氏 :もう一点、今、工藤さん、阿久津さんがお話されている内容は、経営層や人事担当者は響く部分だと思いますが、実際に一緒に仕事をされる現場の社員の方にどのように伝えて行くべきなのかという所をご質問頂いたり、我々自身も課題として感じているのですが、どのように企業様に浸透させていくのかという部分は如何でしょうか?

工藤氏 :やはり、まず経営層、人事、現場、直属の上司や同僚が外国籍社員を採用する際に同じベクトルを向いているかというところや、どのように育てていくのかと言うこと、また、バックグラウンドが違う方を受け入れるということへの考え方や、受け入れる側が自分達も考えなければいけないことを勉強会でも良いですし、社内で何かの形ですり合わせをして行くことが重要だと思います。

阿久津氏 :やはり、目線合わせが重要です。会社の組織の中でも人材に対する期待が違っているんですね。経営層が外国籍人材に大きな期待をしているけども、現場は、「経営層や人事の指示で外国籍人材が配属になっちゃったよという」という感覚だったりして、乖離がありますので、やはり採用前から経営層と現場でコミュニケーションを取って頂いておくこと。

それと、コミュニケーションの後でも、配属先の上長や同僚が一緒にチームアップして行くかということですが、これは日本人の方と同じなんですが、1つだけ、違うバックグラウンドから来ているということに配慮いただくべきなのかなと思います。

杉村氏 :ありがとうございます。

阿久津氏 :続いて、1位の前に番外編ということで、日本語の点を深める為にお話したいのですが、一つ目が時制の使い方ですね。

ここもかなり難しい部分で、過去・現在・習慣が混同してしまうという日本語特有の問題かと思います。これがうまく使い分けられなかったからと言って、意味が大きく変る訳ではないんですが、入社何年目という方でも上手く使い分けられないような方もいて、突っ込まれたりしているということをよく見ます。

阿久津氏 :ここは理解することと、使えることが別と考えても、海外から直接就職する外国籍社員は理解するところまで行っていないというケースもあります。それで良しとして頂ける企業様であればいいのですが。。

工藤氏 :そこは是非、良しとして頂きたいですね笑

阿久津氏 :社内の仕事だけで完結すればいいのですが、取引先の前に出る際等は、問題になりますね。

工藤氏 :そうですね。決定的な誤解が起きてしまうこともありますので、気を付けなければいけないですね。

阿久津氏 :続いて番外編の2つ目ですが、授受表現ですね。

工藤氏 :やはり、「くれる」という表現が分かりにくいみたいで、「田中さんが私に本をあげた」でも、言っていることはそういうことかと意味は分かるんですが、主体が誰かによって使い方が変わってくるのと、内と外の概念ですね。

例えば、「田中さんが私に本をくれた」は、外から内にという意味になるんですが、「田中さんが、山田さんに本をくれた」は、外から外で間違いになるという部分が分かりにくいんですね。

後は、あげるとか、貰うというのは、単にモノが動いただけではなく、恩恵、つまりサービスが付いてくるということがなかなか理解出来ないんですね。

阿久津氏 :長く日本に暮らしている方も、「くれる」の意味合いが分からないという方が多いですね。

働いて行く上でも良く使う表現ですし、これで違和感を持たれてしまうのも、ビジネスの機会を逃してしまうことにもなりかねないので、気を付けたいですね。

工藤氏 :次が、自動詞と他動詞で、特に中国語話者が上級者でも混乱するケースが多いです。これも、言っていることは分かるんですが、例えば、「会議を始まる」とか言ってしまうんですね。

阿久津氏 :商談などを進めて行く中で、上級者でも「が」と「を」を間違えてしまって、優秀な方でも信頼を失ってしまうというケースも聞くので、取引先がそういうものだということで慣れていらっしゃる所であればいいと思いますが、外国人の担当者が初めての方とかだと違和感を持ちやすいのかなと思いますね。

私達も普通に使っている感覚が、外国人の方からすると難しいというのがあるなあと思います。

工藤氏 :企業様にも是非、違和感のある日本語にも慣れて頂きたいですね。

ただし、意味が全く違ってしまったりと言う部分は、勿論注意して行かないといけないんですけど、「こういうことを言っているんだな」ということを汲んであげて、そこを確認するということが大事だと思います。

私なんかもよく、うちの外国籍社員に上級者であっても「こういう言い回しの方が良いよ」ということを確認の上で言ったりするので、企業様が気づいたことをアドバイスしてあげるというのが重要だと思います。

阿久津氏 :では本筋に戻ってあるある問題の第一位ですが、「文化を知らないと通じない日本語」と言うことになります。

阿久津氏 :これは、所謂文法的なものではなくて、このランキング付けの際にも悩んだんですが、いくつか例を出させて頂きました。

まず、「わかりました」という言葉ですが、N4N3位の人材の「わかりました」が、企業様の期待とズレてしまうことが本当に良くあります。

例えば、指示を出して、「分かった?」と彼らに尋ねる時に、指示した内容は勿論分かるんですが、やっておいて欲しい仕事のレベル感が凄く高くて、その仕事をやるだけではなくて、報告書をまとめて、お客さんへの連絡をしておいて欲しいという時があって、それを「分かった?」「分かりました」のやり取りだけでは勿論なかなか伝わらないですよね。

杉村氏 :我々が英語で分からなくてもとりあえず「OK」と言ってしまうようなものですね。

我々は特定技能等のブルーワーカーの方の支援をしていますが、その場合もっと日本語レベルが低くて、指示の内容がそもそも伝わっていないのに、外国籍社員が、「分かりました」と答えてしまうケースもありますね。もう、相槌として「分かりました」と言ってしまう感じですね。

阿久津氏 :東南アジアの文化では、相手の期待に応えなければいけない、何とか応えたいという想いから、「分かりました」というような答えをしてしまうということがあって、それは彼らの文化としては美徳になると思うんですが、仕事の現場では、「分かったと言ったのに出来ていないじゃないか」ということになりますので、そこにギャップが出てきたりということになると思いますね。

工藤氏 :こちら側が指示を出しましたという際に、指示を受けた外国籍社員に具体的に何をするかを語って貰って、いつやるのか、何をやるのかを指示をした側が確認して行くということをやって行くと、指示をした側だけではなく、指示を受けた外国籍社員の方も何%指示を理解出来ていたのか確認をすることが出来ます。

これは、日本語力を測っている訳ではなくて、本当に達成出来るかということを、企業側が把握しておかなければならないことなので、指示をした側が確認するようにお勧めしています。

阿久津氏 :私も良くアドバイスしているのは、本人の口から反復して言わせるようにして下さいということを良く言っていますね。

そうすると、次からの伝え方でどこをしっかり伝えなければいけないのか、指示する側も分かるようになりますね。

次に、「ちゃっちゃと」「さっと」という言葉のニュアンスが、外国人の方だと情景が浮かばないんですね。日本人だと何となくの感覚で、情景が理解出来るんですが、これがなかなか分からない。

例えば、「どんどん進めて」とかも伝わらないケースが多いですね。

「速攻でやっておいて」とか、「なるはやでやっておいて」等、カジュアルすぎる日本語もやはり伝わらないですね。

杉村氏 :さすがにそういったところまで学校では習わないでしょうね。

阿久津氏 :あと、「大丈夫」という言葉で、やるのか、やらないのかが分からない。これも曖昧なので、齟齬が出ることがあります。

杉村氏 :どちらの意味にも取れますね。こちらも支持する側も受ける側も確認する必要がありそうですね。

阿久津氏 :最後は、「話せるのに、読めない、書けない」という概念的な話です。

工藤氏 :企業様が外国籍社員を採用する際に面接などを行って、ものすごくコミュニケーション力があって日本語が話せるよねということで採用して頂くんですが、筆記と言っても提出書類だけなので、もしかすると誰か他の人に書いて貰ったり、或いは、チェックして貰っているかもしれません。

で、話せればいいんですということで採用しても、実際の仕事では、書類を読んでもらったり、書いてもらったり、メールを打ってもらったりという際に、思いのほか話す・聞くという能力と、書く・読むという能力に乖離があることに入社後に気づくということがあって、それで困ってしまうというケースがありますね。

入社時のチェックは、とにかくコミュニケーション力を重視しているので、語彙も豊富で話せていると判断したのに、実は、読めない、書けないというパターンです。

これが何故起こるかと言うと、企業の側が仕事をしている中で、自分達が意識している以上に読むこと、書くことが仕事の中で多いことに後から気づく訳ですよね。

採用時点では、話せればいいということで採用しているんだけど、後からそれだけではダメだということに気づくことが結構あります。

なので、外国人材を受け入れる際に、こういうことをやってもらいたい、こういうキャリアパスを描いてもらいたいというのがあると思うんですが、読む、聞く、話す、書くという日本語能力の4技能について実際に業務の中でどういう仕事があるのか、どのように使うのかということを事前に考えておいて頂ければと思っております。

杉村氏 :なるほどですね。工藤様、阿久津様、本日はありがとうございました。

本セミナーに登壇頂いたお二方は外国人材の採用や、入社後のマネジメントの為のサービスを展開されています。ご関心がおありの方は、是非ご確認下さい。

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